トライスター318便は、マイアミからニューヨークに向かって離陸した。この飛行機の中でスチュワーデスをしているフェイ・メリウェザーは、離陸後間もなく配膳室に向かった。
これから機内のお客180人に軽食を出さなければならない。配膳室に着いたフェイはいつものようにオーブンに手を伸ばそうとして、はっと驚いた。オーブンのガラスの扉に男の顔が映っている。
「まさか・・。」と思って目を疑ったが、配膳室には他に誰もいない。もちろん自分の顔では断じてない。じっと見ていると、男の顔は眉間にしわを寄せ、何かを喋っているようだった。何を言っているのかは聞き取れない。
だが、仕事優先だ。勇気を出してオーブンの扉を開けようとすると男の顔はますます険しくなり、口が動いているのがはっきりと分かる。
さすがに怖くなってフライト・エンジニアを呼びにいった。
「すぐ来て!変なことが起こったの!」
彼女はフライト・エンジニアを連れて配膳室に戻ってきた。
「何があったっていうんだい?」
「そこよ!そのオーブンの扉に幽霊が!扉に男の顔が浮かび上がってるの!」
彼女は恐怖に怯えながら言った。
言われるままにフライト・エンジニアもオーブンの扉を覗き込む。そこにはフェイの言った通り、男の顔がくっきりと映し出されていた。
フライト・エンジニアも、はっと息を飲む。
いや・・まてよ、見覚えのある顔だ・・。この顔は・・航空会社の同僚だったドン・ルポだ!だが彼は一年前に死んでいる。なぜ彼の霊がこんなところに!?
その時、また扉の男の口が開いた。
「気をつけろ・・エンジンが燃える・・。」
とだけ言って、その顔はスーッと消えてしまった。
ニューヨークに着いた途端、彼らはことの一部始終を会社の上層部に報告した。だが報告を聞いてもまともに取り合ってはもらえなかった。
フェイとフライト・エンジニアはそれから二度とトライスター318便に乗ろうとしなかった。
そしてそれから一ヵ月後、機体整備をし、試験飛行に臨んだトライスター318便は、突然空中爆発を起こし、空中で炎上しながら墜落したのだった。